フランスで労働法デモ!市民は何に怒っているのか?

フランス各地では労働法の改正案に対する大規模デモが発生し、100名を超える逮捕者が出ています。

glass-89051_640

スポンサーリンク
レクタングル大




覆面姿の若者が投石

フランス各地では4月28日に労働法改正に対するデモ活動が実施され、一部の参加者が警官隊と衝突した模様です。投石などに対して当局は催涙ガスを使用するなど、過激な応酬が続いています。
フランス全土での参加者は合計で17万人と見積もられており、大規模なデモになっています。

【4月29日 AFP】フランス各地で28日、労働法改正案に反対する抗議行動が行われ、参加者と警察との衝突に発展した。ベルナール・カズヌーブ(Bernard Cazeneuve)内相によると、首都パリ(Paris)では警察官24人が負傷、うち3人が重傷を負った。
パリでは、覆面姿の若者らが瓶や石を投げつけ…記事を読む

発端は労働法改正案

今回のデモの発端となったのは、政府が成立を目指している労働法の改正案です。改正案と言っても、労働者側からすれば明らかな「改悪案」であるとして、反対する政党を中心に反対運動が展開されています。
現在のフランス労働法はとても労働者に優しい内容となっており、例えば一週間の標準労働時間は35時間(日本は40時間)に規定され、年間5週間にわたる有給休暇の取得が定められています。日本でも有給休暇の規定はありますが、長く働いている人でも労働基準法で定められた日数は年間20日です。しかもその取得率にも違いがあり、2013年の資料では日本の有給休暇取得率は39%と4割にも達していません。それに対してフランスの取得率は100%という驚異的な数字となっております。もちろん国民性の違いはあると思いますが、このように労働法によって労働者が手厚く保護されていることから、フランスは世界で4番目に労働時間が短い国であるという調査もあります。
2016年2月に発表された改正案では、この労働法を改正してもっと企業に有利にしようという内容となっています。

改正案の内容は?

今回の改正案では、先ほど述べた週35時間労働が週46時間労働まで認められるようになるようです。日本ではブラック企業という言葉が一般に使われるようになるほど、労働時間管理についてはかなり曖昧に行われている企業が多いのが現状かと思われますが、フランスではもっと厳しく法律で取り締まられています。例えば、日本では(本来は残業代を払わなくてはならないのですが)会社で終わらなかった仕事を自宅に持ち帰って無償で作業させることがあるかと思いますが、フランスではこれは明確に禁止されており、終業時間後は業務に関するメールを送りつけることすら禁止となっています。ですので、週46時間に労働時間がのびるという事は、実際に働いている時間が長くなるという事になります。また、残業の上限が1日あたり2時間延長され、さらに会社と労働者側の交渉によっては現在の水準よりも残業手当を低く設定することが可能になります。
解雇に対しても基準が緩和され、企業は余剰人員の解雇が今よりもやりやすくなります。現在は正社員を会社都合で解雇することはほぼ不可能に近い状況らしく、解雇を言い渡された労働者が裁判所に訴えた場合、(ほぼ)100%労働者側が勝訴して企業は多額の賠償金を支払う必要がある規定になっています。これを改定して、最大で月給の15か月分にあたる賠償金を支払えば、会社都合によって解雇が可能になるようです。ということは、今までは15か月分を大きく超える賠償金の支払いが行われていたと思われます。さらに、景気の変動によって一時的に解雇(賃金の支払い停止)を行うことも認められるようになるとのことで、労働者団体などは反対運動を展開、法案に反対する署名も100万人を超える人数集めています。

国民の7割は反対、でも…

今回の法案に対しては、世論調査の結果7割の国民が改正に反対しているということが分かりました。しかし、政府としては法案の成立を目指す方向でいます。4月上旬からの審議入りが5月にずれこんではいますが、政府はまだあきらめていません。
なぜここまで改正案にこだわるかというと、フランスの高い失業率の問題があります。日本で景気が悪かった時の失業率が5%強だったのに対し、フランスでは現在失業率が10%を超える状態が続いています。特に若者世代に関してのみでは失業率が25%に達するという調査もあり、失業率の改善が政府の緊急課題となっています。
その失業率が高い原因が、過剰に労働者を保護する労働法にあると、政府は主張しています。あまりに労働者が保護されるため、企業としては積極的に正社員を雇わないという事態が起きています。一旦正社員として採用すると日本以上に解雇がしにくく、業績悪化時の人員整理が非常にやりにくいという問題があります。そのため、企業は正規従業員を雇わず、アルバイトのような状態での不安定な雇用を増やしているというのが政府の言い分です。
日本では以前派遣労働を許可した結果、企業はより正社員の採用を減らすという事態になりました。今回のフランスの改正案もそのような事態につながるのではとも思いましたが、今までは解雇できなかったものを、業績によっては整理解雇できるようにする、でもその補償金はちゃんと支払うようにという風に、完全労働者よりの規定を緩和する程度の内容のように思います。
詳細な改正案については内容を精査してみなければわかりませんが、報道されている程度の改定内容であれば、改定後であったとしても今の日本の労働法よりもよっぽど労働者が保護されていると思います。
特に気になったのは、デモで過激化している中心が失業率の高い若者であるという点です。政府の主張によれば、この法改正が行われれば若者によりチャンスが与えられると言っているのですが、どうやら彼らの心には響いていないようです。もしかしたらですが、現在の暴動は本来の目的からは外れて、改正案に対するデモではなくもはや高い失業率と経済悪化に対する、やるせない不満を爆発させた結果となってしまっているのかもしれません。

スポンサーリンク
レクタングル大




シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

スポンサーリンク
レクタングル大